2021.03.11 荒川コミュニティカレッジ公開講座「あらかわの防災」に参加しました。
荒川区の水害対策 (荒川区区民生活部 防災課長)
荒川区で予想される水害
荒川区の西日暮里の傾斜地を除く9割は、荒川の決壊による外水氾濫やゲリラ豪雨などによる内水氾濫が心配される地域である。
特に荒川流域で72時間の総雨量が632ミリを超えるような大雨が降り、赤羽の岩淵水門付近で氾濫が起きた場合は、尾久で1~2時間後、南千住で5~6時間後に浸水が始まる。
浸水の深さは、ハザードマップのオレンジ色の地域は0.5~3mで1階の天井まで、赤色の地域は3~5mで2階の天井まで水が上がるため、建物の3階以上への避難が必要になる。
また、浸水期間は50㎝ぐらいの水位に下がるまでに2週間以上かかると予想されており、長期間、建物内に取り残される可能も出てくる。
ライフラインの停止
生活への影響としては、下水道があふれトイレが流れない、手が洗えない、停電によって空調や冷蔵庫、個調理器具が使えないといったことが考えられる。
マンションではエレベーターが停止、ポンプで水道が汲み上げられなくなることも予想される。
大雨や台風といった水害は夏場に発生することが多く、熱中症や衛生状態の悪化も心配される。
各家庭では、自宅等に取り残された場合に備え、水や食料、携帯トイレなどの衛生用品を1週間分備蓄しておくことと、暑さ対策についても考えておきたい。
荒川区の水害対策
台風19号での経験や教訓を踏まえ、荒川区風水害対応方針で災害対策本部体制や避難場所の開設方針を策定した。
また、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、複数の場所へ分散避難することや避難スペースの確保、避難場所における感染防止対策の実施方針も策定した。
避難場所すべてに開設・運営を担当する職員を置き、避難者の状況に応じたスペース分けや感染防止対策にあたる。
避難行動要支援者の個別避難計画については、策定中。
広域避難について
荒川区は、荒川が氾濫すると水が2週間以上引かない地域であることから、多くの人が建物内に取り残され、救助に膨大な時間がかかることが想定される。
このため、巨大台風の数日前から区外への広域避難を勧告する可能性も考えられる。
ただし、広域避難場所を国や東京都と検討しているが、現段階で決定していない。
江東5区の住民が優先であること、多数の避難者に対する避難場所の確保が難しいことなどから、避難場所が決定するまでは、建物の上層階に避難する「垂直避難」を原則として行動する。
避難のタイミングと情報の入手
荒川区が発令する避難情報は、避難準備・高齢者等避難開始→避難勧告→避難指示(緊急)→災害発生情報の4つ。
各家庭で、いつ、どこに、どうやって避難するかを事前に話し合い、確認しておくことが重要である。また、避難する際は、避難場所の開設情報や混雑状況も参考にして欲しい。
情報の入手先として、荒川区のホームページ、公式ツイッター、フェイスブック、メールマガジン、防災アプリ、テレビのdボタン、緊急速報メール、エリアメール、音声による放送がある。
災害時にスマートフォンですぐ確認できるように事前登録や設定、使い方を確認しておく。
参加型学習(クロスロード演習)
災害時対応のジレンマを体験するクロスロード演習をグループに分かれて行いました。
「避難勧告発令、介護の必要な母を連れて避難するか否か」
「区の職員として混雑する避難所をどう運営するのか」
という設定で自分ならどう対応するかを考え、話し合い、発表。
演習を行うことで、災害のイメージを膨らませ、立場による考え方や行動の違いを知り、平時にしておくべき課題に気づくことができました。
参加者の声・感想
コミカレ生をはじめとする荒川区在住・在勤の参加者からは、新設するマンションや施設に備蓄庫や避難所の役割を持たたり、避難場所を提供してもらえる既存建物や企業を増やしたりはできないかという提案などもありました。
荒川区の水害対策について防災課長から直にお話を伺う機会は大変貴重です。公助としての区の取り組みがどうなっているのか、自助としての家庭での必要な備えは何か、共助として普段から意識しておくべきことが明確になる内容でした。震災対策編も開催して欲しいです。